Protein Materials:
A Revolution in Manufacturing

鋼鉄の340倍という異次元のタフネスを有する「クモの糸」をはじめとするタンパク質は、20種類のアミノ酸の組み合わせにより多種多様な素材を生み出すことが可能な素材の「プラットフォーム」です。機能性と環境性に優れ、テーラーメイドで多品種少量生産でも低コスト化が可能という、とてつもないポテンシャルをもつ新世代の基幹素材として期待されています。遠くない将来、金属やガラス、ナイロンやポリエステルのように、人類がタンパク質を使いこなす時代が到来します。私たちは、志あるパートナーとともに、ものづくりの新時代を切り拓きます。

TrajectoryLaunching

Background11年間の技術革新

コストの障壁

ではなぜ現在タンパク質素材が産業的に利用されていないのでしょうか。その最も大きな理由は「コスト」です。発酵の世界には、微生物によるリコンビナントタンパク質の製造コストは1キログラムあたり100ドルを下回ることは困難であるという「常識」がありました。私たちは、これを "$100 Barrier" と呼んでいます。一方、素材の世界では、1キログラムあたり20ドルから30ドルを下回らなければ大規模な普及は困難であることが「常識」とされています。さらに数百億ドルを超えるような巨大市場の開拓を目指すのであれば、1キログラムあたり10ドル以下を目指す必要があります。つまり「発酵」と「素材」、このふたつの世界のコスト水準には大きな隔たりがあり、投資に見合う市場の開拓が困難であったため、これまでタンパク質が「素材」として使いこなされることはありませんでした。

圧倒的なコストダウン

圧倒的なコストダウンを実現するためには多くの技術革新が必要でした。クモの糸をつくりだすためには、タンパク質の分子・遺伝子の設計技術、DNAの化学合成、遺伝子組換え技術、発酵工学、精製技術、紡糸加工技術など、必要な技術分野は多岐にわたりますが、この全てをカバーできる研究チームは世界中に存在しませんでした。私たちは、このテーマに取り組む上で必要な全ての技術要素を内製化し、各プロセス開発の分業化を撤廃、分野横断的な研究体制を構築し、トータルプロセスをゼロから見直しました。そして、技術領域にまたがる多くの課題に対し、地道に、徹底的に考え抜き、合理化と高度化を進めてきました。機能性と生産性の両立、素材のテーラーメイドデザインを可能にする私たちのフィードバックサイクルは、新素材開発のための革新的なプラットフォームです。

Five Step Feedback Cycle

  • 1. 分子デザイン

    目的は機能性と生産性を両立した新規タンパク質の分子デザインを行うこと。機能性に優れ、生産性の高い分子を創出することで、初めて工業生産が可能になります。アミノ酸配列及び遺伝子配列のデータを解析し、より強度の高い分子、より伸縮性の高い分子、より耐熱性の高い分子など、高機能化のための分子デザイン、そして微生物発酵での生産性を高めるための分子及び遺伝子デザインを、バイオインフォマティクスを駆使して実現します。

  • 2. 遺伝子合成

    新規分子の創出を推進するためには、どのようなアミノ酸配列の遺伝子でも、ハイスループットにDNA合成が行なえることが重要です。しかし、クモ糸のアミノ酸配列は繰り返し配列が極めて多く、既存手法では人工合成が困難でした。私たちは、この課題の解決にいち早く取り組み、どのようなフィブロイン遺伝子でも最短3営業日で合成が完了する独自の遺伝子合成技術を確立しました。本技術を用いて、既に600種類以上の人工遺伝子を合成し、ライブラリー化しています。もちろん、今日も新しい遺伝子を合成中です。

  • 3. 微生物発酵

    データベースに蓄積された過去のデータをもとに性能や生産性をデザインされた候補分子は、その遺伝子を合成したのち、微生物を用いた独自のタンパク質発現システムで試験的に生産します。小スケールで発酵生産条件、精製条件の検討を行い、遺伝子合成から最短10営業日で紡糸条件の検討に移ります。その後、必要に応じて培養のスケールアップを行い、タンパク質原料の取得を行ないます。現在、微生物を用いたフィブロインの生産で、世界で最高の生産性を実現しています。

  • 4. 紡糸

    発酵工程で生産された繊維の原料であるフィブロインは、精製工程を経て独自の紡糸技術で繊維化されます。創出された人工合成クモ糸繊維の特性は詳細に解析され、データベースにフィードバック、次の分子デザインに活かされます。スパイバーでは、紡糸技術をゼロから自社開発し、天然クモ糸に匹敵するタフネスを達成、さらに、これまで不可能であった量産規模へのスケールアップ可能な紡糸基礎技術を確立し、工業化への道筋を切り拓きました。

  • 5. プロトタイピング

    繊維化された素材を加工し、テキスタイルやコンポジットなどの材料として実際の製品試作に使用します。製品の試作・評価を繰り返しながら新素材を用いたものづくりに必要となる設備や加工技術を開発し、エンドユーザーにとっての最終製品の価値を最大化します。また、遺伝子合成からプロトタイピングに至る全てのプロセスで得られた膨大なパラメーターに基づく生産性や機能性の評価結果はデータベースに蓄積され、次世代の分子設計にフィードバックされます。

Development
as of Sep. 2016

Design Iteration
12th generation
Gene Synthesis
810designs

Breakthrough

私たちはこのフィードバックサイクルを核とした11年間の技術革新の積み重ねにより、産業化に向けた大きな課題となっていた発酵プロセスにおける圧倒的な低コスト化を実現しました。発酵生産実験を本格的に開始した2008年から、生産性は4,500倍にまで向上。その結果、発酵プロセスでの製造コストは1/53,000になりました。そしてついに大規模な普及を目指せるコストでの生産が視野に入りました。

Initial Targetまずはアウトドアフィールドから実用化

アパレル分野は約2兆ドルの巨大産業です。そして輸送機器分野や医療分野に比べれば開発から市場への投入までの期間が短いため、早期の普及を目指すのであればアパレル分野から実用化を進めるのが合理的です。その中でもより高度な機能性や環境性が求められ、市場規模も大きく、タンパク質素材が切り拓く世界観との親和性が高いアウトドアは、タンパク質を素材として産業的に使いこなすための入り口にふさわしいフィールドです。そして今、このアウトドアフィールドにおける世界的なリーディングブランドである「THE NORTH FACE」とともに、新時代を切り拓く準備が整いました。

Productivity

x4,500

Cost

1/53,000

Priority Segments (Market Scale : USD. Approx.)

  • Apparel

    2,000billion

  • Automotive

    2,500billion

  • Medical Devices

    350billion

Mankind MeetsMOON PARKA

Prepare for the next frontier of human civilization
with an unprecedented leap in materials science.
The revolution starts now.

MOON PARKANew world of exploration

2015年9月26日、私たちが開発を進めてきたクモフィブロインベースのタンパク質素材「QMONOS®」を用い、THE NORTH FACEの "ANTARCTICA PARKA" をベースにしたアウタージャケットのプロトタイピングに成功しました。私たちは、この歴史的プロトタイプを "MOON PARKA®" と名付けました。

月(Moon)は人類が到達した中で最も遠く、過酷な極地です。アポロ計画は "Moonshot" の意味を変えました。不可能で馬鹿げているという意味から、ハイリスク・ハイインパクトで壮大な挑戦という意味に。不可能と言われてきたクモの糸の実用化という夢はまさに "Moonshot"。工業素材の歴史上最も大きなイノベーションは、"MOON PARKA®" とともに幕をあけます。

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A GIANT LEAP

実際の工業ラインで製造された世界初のプロトタイプ

プロトタイピングの実施にあたり、Spiberが保有する分子ライブラリより表地及び刺繍糸に最適なタンパク質の選定から、紡糸、撚り、織り、縫製など、各プロセスの最適条件を検討するため、膨大な数の試作を行いました。また、"MOON PARKA®" は実際の工業ラインで製造された世界で初めての人工タンパク質素材が使われた衣服です。このプロトタイピングを通じ、工業化プロセスの確立に向けて多くの課題を把握することができ、実用化に向けて準備中です。

Special Event
2015.10.08